かんたん!たのしい!失敗から学ぶガーデニングのすすめについて

ガーデニングに興味がありつつも、虫が苦手であったり、日々の手間を考え、始めるのを躊躇している方に向けて、植物のある生活の楽しさ、お手入れのコツなどをご紹介します。
ポイントその1「虫さんとのおつきあいについて」
虫さん、苦手な方も多いのではないでしょうか。
私自身も以前は家の中で遭遇する小さなクモにもおびえるほど虫嫌いで、ガーデニングを楽しむにあたってこれが最大のハードルといっても過言ではなかったです。
そんな私でも5年ほどガーデニングを楽しんだ結果、ほぼすべての虫に素手で触れ、むしろつぶさに観察するくらい、苦手意識がなくなりました。
これによってガーデニングを行なう際のストレスは大幅に減り、俄然楽しさが増すようになりました。
以下に虫とのおつきあいの遍歴、苦手意識克服のコツをご紹介します。
虫との攻防

最初は比較的育てやすい「ひまわり」「朝顔」「コスモス」のプランター栽培から始めました。
ベランダは東向きであるため日当たりは問題なく、水さえやれば問題なしと、初心者の私は思っていました。
発芽、本葉とすくすく成長し、このまま上手くだろうと思った矢先、まずひまわりに異変が起きたのです。
いつもの水遣りをしようとベランダに出ると、様子がおかしい。
葉っぱがレース網のようにスカスカになっているのです。
原因はバッタ6兄弟。
いったいどこから来たの、いつからいたのと動揺しながら、割り箸でおそるおそるつかみ、袋に回収して近所の川原で元気に育って欲しいと見送りました。
これは油断できないと、翌朝改めて見回りをすると、ひまわりの葉の被害がさらに拡大。
まだ仲間がいたのかと思いながら念入りに探索すると、前日の一斉検挙をまぬがれた残りのバッタが警戒感あらわにこちらを見上げているのです。
前日見送った兄弟たちとの再会を祈りつつ、再び川原へと放ちました。
翌朝、もう大丈夫だろうとおそるおそるベランダを除くと、時すでに遅し、バッタ兄弟の食い荒らしと折からの酷暑でひまわりは全滅しました。
初心者定番のひまわり栽培に失敗するという事態にショックを受けつつも、残る朝顔、コスモスへ注力しようと気持ちを切り替えました。

それから数日後、次はコスモスに異変が起きたのです。
今度は何なの勘弁してほしい、と思いながら検分すると、犯人はハダニ(植物に発生するダニの一種)でした。
いつのまにか大規模コロニーを形成しており、駆除を試みるもその勢いはとめられず、コスモスの葉は全て枯れ、花もしおれました。
これからコスモスの最盛期というタイミングでこの結果を迎え、初心者ながら更なるショックを受けました。
ベランダという隔離環境で油断していましたが、購入した土の中や、風に乗って飛来したりなど、思ったより敵は沢山いたのです。
こうなると最後の頼みの綱は朝顔です。
これだけは成功させて見せると意気込むも、やはり何の問題もなく、というわけにはいきませんでした。
最大の敵は、一番苦手な青虫。
いつのまにか飛来した蛾や蝶の赤ちゃんがそこかしこで葉っぱをもぐもぐ。
取っても取っても、次の日には現れるというもぐらたたき状態なのです。
ただ、この奮闘の甲斐はあり、朝顔は秋の終わりまで美しい花姿とグリーンカーテンによる涼をもたらしてくれました。
毎朝ベランダに出ると咲いている朝顔は、まるでどこからか届く贈り物のように嬉しく、この期間は朝起きるのが楽しみでしょうがありませんでした。
また、グリーンカーテンは年々勢いを増す夏の暑さを大幅に和らげ、電気代の節約にも繋がったことは費用対効果としても抜群でした。
またグリーンカーテンはベランダの外からも見えるため、一斉に咲いた朝顔は近隣の方にも喜んでいただけて、楽しみをシェアできたことも良い思い出になりました。

このささやかな成功体験に支えられながら、その後もイチゴやブルーベリーを育ててはコガネムシに襲われ、バラを育ててはアブラムシにたかられ、虫との攻防は尽きることはありませんでした。
虫さん克服のコツ

上記のとおり、綺麗な草花を維持するため、また不快な思いをしないように虫を駆逐しようと戦っていた私ですが、日々手入れをするうちに意識も変ってきました。
完璧な駆除を目指すと自分自身を追い込み、ガーデニングを楽しむ前に疲れてしまいます。
6、7割くらい順調に行けばよし、と目標を切り替え、残りは虫へのご飯と住処を提供しているという意識で共存を目指したのです。
ただ、一度に大発生されてしまっては植物が枯れてしまうので、風通しを良くしたり、出先で見つけたカマキリやテントウムシ等の益虫(害虫を食べてくれる虫)をベランダに放ったりなど、なるべく負担なく、楽しめる工夫をしました。
童心に帰って公園や森で益虫捕獲に走りまわったことは、家族含めての健康増進にもなり、一石二鳥とはこのことでした。

また虫といえば、あの姿かたちや動く様子がなかなか受け入れがたかったのですが、これについても、いっそ敵を知ろうということで図鑑や書籍でその生態を学びました。
そうすると苦手意識は薄れ、必死に生きているその姿に愛しさすら感じるようになり、虫も含めた生命の循環を感じながら、ガーデニングをより深く楽しめるようになったのです。
ポイントその2「かんたんお手入れのこつ」

お手入れをなるべく楽にしながら、ガーデニングをとことん楽しむ最大のポイントは「丈夫で再生力の高い植物を選ぶこと」です。
丈夫な植物は水やりと風通しさえ気をつければ、ほとんどお手入れの負担はありません。
具体的にお勧めしたい植物は「バラ」「クレマチス」「ハーブ」の3つです。
まず植物の2大女王の「バラ」「クレマチス」については、たとえ虫や病気にやられても、花後の剪定をするたびに何度でもリセット、再スタートできるのです。
病害虫に強く、何度も返り咲きする品種を選べば、最小限のお手入れで真冬以外はほぼ一年中、その美しい姿を楽しむことができます。
そしてこのペアは、どの品種や色を組み合わせても絵になるので、ぜひお好きな花色、花形を見つけていただきたいと思います。

そして「ハーブ」については、素朴な美しさと強い生命力が最大の魅力です。
ラベンダーやローズマリーなどを選べば、バラやクレマチスの美しさを引き立てながら、さらに虫除けとしてのガードマンにもなってくれます。
他にもキッチンハーブとして日々の食卓に登場したり、剪定した枝葉をバスタブに入れるなど、楽しみかたは無限に広がります。
また、ハーブ類は基本的に丈夫で生育旺盛なので気楽に育てられますし、最盛期には収穫が成長に追いつかないほどです。
香り、葉の形も様々で、魅力的なハーブが沢山ありますので、こちらもぜひお気に入りを見つけていただきたいと思います。

丈夫な植物を選んだうえで、お勧めはやはり「あまり完璧を求めすぎない」気持ちを持つことです。
どのへんをラインとするかは勿論それぞれなのですが、私はやはり6、7割くらい順調に行けばというラインがおすすめです。(最初はもっと低くとも良いと思います)
ハードルを下げることで心にはゆとりができ、なにより純粋にガーデニングを楽しむことができ、はじめの段階ではこれが一番大切なことかと思います。
といいつつも、ガーデニングに成功も失敗もありませんので、時に上手くいかない過程も含め、すべてを楽しめるのがガーデニングの良いところだと思います。
ガーデニングの効用について

ガーデニングを始めて5年、完全無農薬のため、虫喰いの葉っぱも多数、仕立て姿も時に乱れたりと、完璧に絵になる様子とはいきませんが、自分で世話をした花には格別の愛着を感じられ、また日々表情を変えるその姿に魅了されっぱなしで飽きることはありません。
以前はお店で売っている切花のように、完璧な形で虫もいない花が美しいと感じていましたが、今では虫喰い跡も、不ぞろいな花姿も得がたい個性だと思えます。
また、農薬を使わないことでカマキリやテントウムシ等の益虫も定住してくれ、さらに蜂や小鳥も訪れてくれるようになりました。
これらは害虫を適度に食べてくれる上にその愛らしい姿でガーデナーの目を楽しませてくれます。
特に蜂は受粉の助けには欠かせないので、果樹栽培をする際にはぜひ仲良くしたい相手です。
そして無農薬栽培でなにより嬉しいのは、安心して植物の香りや味を楽しめることです。
朝露のおりた花やハーブの香りはすばらしく、深く呼吸をすることで、心からリラックスして気持ちの良い一日のスタートを切ることができます。
また、収穫したてのフレッシュなハーブは、乾燥ハーブとはまた異なる、野生的で強い香りを楽しめます。
料理に手をかけなくてもハーブを添えるだけで、肉、魚、野菜のどれもが、まるで料理上手になったかと錯覚するほどに美味しくなります。
ハーブは姿よし、香りよし、味よしの3拍子そろった植物なので、もし迷ったらハーブ一鉢からガーデニングをはじめてみてはいかがでしょうか。
特に育てやすく、利用範囲も広いのはバジル、タイム、ミントなどです。
このような日々の楽しさに加え、街を歩いているときの感覚にも嬉しい変化が起きました。
これはガーデニングによる思わぬ効用でしたので、是非ご紹介したいと思います。
具体的には、近隣住宅の庭先の草花や道端に咲いている雑草にいたるまで、以前より格段に活きいきと、輝いて見えるようになったのです。
誰しも興味のある分野には自然と目がいくようになるものですが、その対象が植物全体となると、自宅のベランダのみならず、周囲の環境すべてがテーマパークのごとく楽しくなってくるのです。
世界の解像度が上がり、今まで見ていた周囲の環境がまるで異なる美しさで迫ってくるこの感覚を、ぜひ多くの方に味わっていただきたいと思います。
また、ガーデニングを入口に植物への興味を持ち始めると、その奥深さにも驚かされました。
例えば、動けない植物が受粉の工夫や種子を運ぶ独自の工夫をこらしていること。
これを知ると、移りゆく植物のどの瞬間も見逃せない貴重なものに感じられ、道端に咲いている雑草からも目が離せなくなってきます。
そして、画一的な形の切花と異なり、ガーデニングで育てる植物は、同じ種類でも環境やそれぞれの個性による違いがあることも、とても興味深いことでした。
同じ植物を育てていても、季節ごと、また経年の変化があり、年を経るごとにその奥深い個性に益々魅了されます。
そして、前述にもありますが、植物や虫、動物を含めた生命の循環を身近に感じられることも、ガーデニングの大きな効用と思います。
食べて食べられ、私たちもその循環の中に身を置いていると思うと、周囲の環境や食べるものすべてがより貴重なものに感じられ、今まで以上に感謝の気持ちを持って相対することが多くなりました。
少し話が大きくなりましたが、ガーデニングの楽しみ方は人それぞれです。
上記は自身の体験に基づく主観ですが、ぜひ植物を身近に感じていただき、思いおもいの楽しみ方を見つけていただければと思います。
おわりに「ガーデニングについて語り合おう」

最後になりますが、もしこれを読んだあなたがガーデニングを始めたら、その楽しさを周囲の人とシェアしていただきたいと思います。
ガーデニングを切り口に話題を振ると、経験者は飛びつきますし、未経験者の中にも潜在的に興味のある人は思いのほかいるものです。
経験者であれば、好きな植物の話にはじまり「あの植物園はぜひいくべき」「苗を買うならあの園芸店がおすすめ」など園芸談義は尽きません。
そのうちに苗の交換やお手入れ方法の情報交換をしながらお互いのスキルを高めたり、より上級者から栽培のコツを伝授してもらうのも楽しいと思います。
私自身も、ガーデニングを通じて家族やご近所の方とも交流が深まりました。
その際、植物の話題が楽しいのはもちろんのこと、その話題を通じて思いがけない相手の人柄に触れることもあり、ガーデニングを話題にすると自然とお互いに心を開きやすいのかもしれません。
そして経験者でなくとも、ガーデニングを始めてワクワクしているあなたの話は興味深いものになるでしょう。
もしかしたらそれをきっかけにガーデニングに関心を持つかもしれません。
そうしてガーデニングの仲間の輪が周囲に広がっていくと楽しみは2倍、3倍に増えていくかと思います。
ガーデニングの醍醐味は、楽しみが人それぞれであることから、その楽しみ方を分かち合うことがとても価値を持つ点にあると思います。
お互いの趣向、楽しみ方を否定せず、たたえ合いながら、ガーデニングの輪を広げていきましょう。