もうパワハラに悩まない!対策マニュアル

「職場で上司に怒鳴られてつらい……」

「上司のミスを自分のせいにされた!」

職場で「これっておかしくない? もしかしてパワハラ!?」と思うことがあっても、仕事は簡単には辞められないし、人間関係に波風立てたくないし……と我慢してやり過ごしてしまっていませんか? 

声を上げずにいると、相手はますますエスカレートしていき、あなたの立場はつらくなる一方、なんてことも。パワハラする人のせいで、あなたが心身の健康を害することになったりしたら、やりきれませんよね。

そこでこの記事では、パワハラに対して毅然とした態度をとり、自分の身を守るノウハウを紹介します。最後まで読めば、自分を大切にする勇気が湧いてくるはずです。

1.2022年4月に「パワハラ防止法」が中小企業にも適用

かつては、上司が部下をきつく叱るのは当たり前、という時代もありましたが、令和の今はもちろん違います。2022年4月に「労働施策総合推進法」、いわゆる「パワハラ防止法」が大企業だけでなく中小企業や個人事業主にも適用されています。

「パワハラ防止法」により、パワハラの定義が明確化され、事業主はパワハラ防止のための措置をとる義務があることが明確にされているのです。ですから、パワハラされても泣き寝入りする必要はありません。堂々とあなたの人権を取り戻しましょう!

2.そもそもパワハラの定義とは?

どこからがパワーハラスメント(パワハラ)にあたるのでしょうか? パワハラされたと思った人が「パワハラだ!」と言えばパワハラになる、なんて誤解していないでしょうか?

職場におけるパワハラとは、

①優越的な関係を背景とした言動である

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものである

③労働者の就業環境が害されるものである

①から③までの要素を全て満たすもの、と定義されています。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

①「優越的な関係を背景とした言動」とは

端的に言うと、相手が「NO」と言いづらい関係です。分かりやすい例は、「社長から社員」「上司から部下」にとられる言動ですね。では、部下から上司へのパワハラはあり得ないのかというと、そうとは限りません。

業務上の知識や経験が豊富な部下が、上司に嫌がらせをするために業務の妨害をすればパワハラにあたります。部下や同僚が集団で上司を無視し孤立させる、というのもパワハラです。

②「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」とは

業務とは関連性のない言動や、業務と関連はあってもやり方が不適切な言動のことです。仕事でミスをしたら、上司から注意を受けるのは、業務上必要かつ相当な範囲」内のことと言えますよね。

ミスをしたことで、人前で怒鳴られたり、長時間叱責を受けたり……となると、程度を超えていると言えるでしょう。仕事のミスを引き合いに、人格を否定するような発言をするのも不当です。

③「労働者の就業環境が害される」とは

当該言動により、労働者が身体的・精神的苦痛を与えられ、業務に支障が生じたこと、あるいは職場環境が悪化したことを言います。これを判断するにあたっては、「平均的な労働者の感じ方」を基準にすることが適当とされています。

「私は“平均的な労働者”より傷つきやすいだけかも……」と思っても、個人によってメンタル耐性は異なります。あなたの精神的苦痛が大きいようであれば、本記事も参考にしかるべき対応について考えましょう。

3.具体的なパワハラ6分類について

厚生労働省の指針では、具体的なパワハラ例の分類として下記の6つが挙げられていますので、参考にしてください。厚生労働省指針には、さらに具体的なパワハラにあたる例、及びパワハラにはあたらない例が明記されているので、興味のある方は確認してみてください。

・身体的な攻撃(暴行・傷害)

・精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)

・人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

・過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)

・過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)

・個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

4.パワハラされているのに、抗議ができない……

パワハラの定義を確認し、「自分はやっぱりパワハラされている!」と思ったなら、社内のハラスメント相談窓口や、外部機関に相談しましょう。でも、なかなか相談できずにいる人も多いのではないでしょうか? 

パワハラについて抗議したことで、社内での自分の立場が悪くなったり、かえってパワハラが悪化したりするのではないかという不安もありますよね。

そこで実際にパワハラを受けた人や、パワハラのある職場で就業していた人の声を紹介しますので、是非参考にしてください。

■パワハラされていることを、私がなかなか自覚できなかったわけ

「私が上司から厳しく叱責されるのは、自分が至らないからだとずっと思っていました。周りのみんなはその上司とうまくやれているし、みんなも悪いのは私だと思っているように感じていました。でも、その職場を離れた後に、別の職場でパワハラについて学ぶ動画を見る機会があり、やっぱりあればパワハラだったと思います」(接客業/30代女性)

パワハラされていて、味方がいない状況、つらいですね。

人気絵本『きみのことがだいすき』(2022年 いぬいさえこ作 パイインターナショナル)にこんな文章があります。

99人に 合う 靴だって、

きみに 合わなきゃ 意味がないんだ。

みんなが 平気な顔をしていても

きみが、

ちょっと いたいな。なにか へんかも。

そう思ったときは、

むりをしなくたっていいんだよ。

自分の違和感を見過ごさず、声を上げるよう勇気づけてくれる言葉です。子供向けですが、大人にも響きます。

■パワハラされていることに、意外と周りの人は気付いていない

「私は事務職で、私にだけあたりがキツい技術職の方がいました。細かいことでしつこく注意したり、つっけんどんな態度をとったり、ミスをすると大きくため息をつかれ、その人と話すときは常にビクビクしていました。周りの人が気付いて助けてくれないかと思ったときもありますが、そうはなりませんでした。気持ちが限界になり、ついにその人の上司に相談したところ、『全然気がつかなかった。もっと早く言ってくれればよかったのに』と言われて驚きました。他の人にも、『そんなに悩んでいたなんて知らなかった』と言われました。みんな気付いていて知らないふりをしているのだと思っていたのもあって、言いづらかったのですが、黙っていたら大丈夫だと思われてしまうんですね」(事務職/40代女性)

あなたがパワハラされていることに気付いた人がいたとしても、本人が助けを求めないと周りの人は動きづらいものです。パワハラされている状況を打開するきっかけを、自ら作りましょう。

■パワハラする人は相手を選んでいるんです。

「以前働いていた職場の店長は常に誰かにパワハラしていました。パワハラ対象が異動したり、辞めたりするとまた別のターゲットを見つける、ということを繰り返していて。見ていると、大人しくてパワハラしても抵抗しない人を選んでやっていました。その様子を見ているだけでもストレスになるので、転職しました」(販売業/20代男性)

パワハラに遭うと、自分が悪いのだと思ってしまい無抵抗な人もいますが、おかしいのはパワハラする人です。ターゲットになった自分を責めずに、まずはパワハラされていることを自覚しましょう。

5.パワハラされていることを誰に相談すればいい?

自分がパワハラされていることが分かり、解決に向けて動くことを決めたら、次に何をするのがベストでしょうか? パワハラする人に「パワハラするのは止めてください!」と直談判するのはハードルが高いですよね。また、冷静に話し合えず、こじれる可能性もあります。

おすすめは、パワハラする人より上の人に相談することです。社内にハラスメント相談窓口があれば、利用するのもいいでしょう。

社内では相談しづらい場合は、下記相談機関があるので、活用してください。

・労働局及び労働基準監督署の総合労働相談コーナー

・各都道府県の労働委員会

・法テラス

・弁護士

・みんなの人権110番

相談する際、パワハラの証拠が不十分でないよう、パワハラの記録をまとめておくことも重要です。メモやパワハラメールの画像などを残すのもいいですし、録音する手段もあります。録音した場合、データの取り扱いには注意しましょう。

6.実際にパワハラについて相談したらどうなる?

パワハラについて、相談した後どんなことが起こるのか、知っていますか? 

社内で相談し、パワハラ対応がうまく機能している場合は、下記のような流れで対応されます。

①どのようなパワハラがあったかや、今後の対応についての希望を相談者が相談担当者に伝えます。パワハラをしている人に注意する、配置転換をするなどの対応が考えられます。

②調査担当者が、パワハラの事実について確認します。

➂パワハラの事実が確認できた場合、パワハラ行為者への指導、被害者と行為者の距離をとらせるなどの対応をします。パワハラ行為が明らかな場合には、調査を待たずに被害者と行為者を引き離す措置がとられることもあり得ます。

④パワハラの調査結果によっては、行為者の話も聞いた上で、懲戒処分が検討されます。

⑤社内でパワハラが発生した原因を究明し、再発防止のため、注意喚起や研修が行われます。

調査が難航するなど、社内で解決しきれなかった場合は、弁護士に調査を依頼することもあります。公的機関に相談した場合は、適宜助言・指導や、あっせん制度への案内をしてもらえます。

パワハラによるストレスで、うつ病などを発症した場合、医師の証明を得るなどの手続きを行い、労災認定されることもあります。

公的機関での相談がうまくいかなかった場合は、弁護士に相談し、パワハラにより退職に追い込まれた等の損害について訴え、損害賠償を請求することが可能です。

7.パワハラはできれば未然に防ぎたい!

これまでパワハラされた後の対応を見てきましたが、パワハラに遭うことは繰り返したくないですし、始めからパワハラ遭わないことが一番ですよね。そこで、パワハラされにくいタイプの特徴を知っておくことも有効です。特徴として、こんなポイントが挙げられます。

●ズバリ、仕事ができる

仕事のスキルが高ければ、上司からの信頼関係を築くことができ、付け入るスキがありません。

●あいさつ、報・連・相をしっかりし、コミュニケーションをよくとる

「仕事ができる」にもつながりますが、意思疎通がとれていることは仕事の基本です。適切に上司に確認しながら仕事を進めれば、業務の無駄を省くことにもつながります。反対に、意思疎通がうまくとれず仕事に支障があると、上司をイライラさせ、パワハラにつながる恐れがあるので気をつけましょう!

●はきはきと話し、堂々としている

同じことを話しているのでも、自信がなさそうにボソボソ話すのと、堂々と大きい声で話すのでは全然印象が違いますよね。オドオドしている人はやはりパワハラのターゲットになりやすいいです。仕事にあまり自信がなくても、「自分はこの職場に必要な人間なんだと」思いながら、働いていると存在感が増してきますよ。

●嫉妬をうまくかわす

仕事ができて、コミュニケーション能力が高く、自信もあるのにパワハラされるとしたら、嫉妬されているのかもしれません。仕事でうまくいったときなど、「○○さんのおかげです」などと意識的に言い、自分だけの手柄だと思っていないことをアピールするのはどうでしょうか。日ごろから感じよくふるまい、お土産をプレゼントしたりするのもいいかもしれません。

8.それでもパワハラに遭うときは遭う

パワハラされやすいタイプも、パワハラに遭いにくいタイプも、パワハラする人に出会うときは出会います。そんなとき、パワハラされやすいタイプだと思っている人は、自分を責めず、パワハラする人から極力逃げましょう。

仮に、あなたが仕事でミスが多いからといって、怒鳴ったりする人はおかしいです。パワハラする人が働いているような会社はこちらから願い下げし、なるべく早く辞めるのが賢明な選択です。

「逃げるは恥だが役に立つ」というドラマがありましたが、逃げることはとても役に立ち、恥ではなく、自分を守るためにできるすばらしい選択です。

とは言え、色々事情があって簡単には仕事を辞められない、という人は、先述の通りしかるべき対応をとっていただきたいです。職場を変えても、またパワハラに遭ってしまう…という人もときにはその職場で闘ってみてはいかがでしょうか。

まとめ

パワハラだと言われることを恐れて、部下への指導がうまくできないと嘆く社員がいる一方で、いまだにパワハラが横行している職場があるというのも事実です。

パワハラする人は強そうに見えて、本当は自信がなかったり、公私においてストレスを抱えこんでいたりするのかもしれません。必要以上に恐れず、境界線を引く努力をし、パワハラがひどいときには相談する判断をしましょう。

パワハラに悩む人が、こちらを参考に働き続けることに希望を見いだしていただけますと幸いです。


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