ペットショップに行く前に考えて!保護犬・保護猫を迎える選択

ペットショップでペットを購入することがめぐりめぐって動物の殺処分を助長しているという事実や、人のせいで悲惨な目に遭う動物の現状、さらには動物の救済に奔走する動物保護団体の活動を紹介しながら、ペットの問題を前に私たちにできることを考えてみた。

1.ペットショップという手軽さの裏に

ペットは私達人間を、和ませ、癒してくれる存在であり、かけがえのない家族である。

しかしその一方で保健所に持ち込まれたり、野山や公園に遺棄されるペットも少なくない。

なぜに、そんなことが起こってしまうのか。

大きな理由にペットショップの存在が挙げられる。

ペットショップは気軽に立ち寄れる上、ケージの向こうには人気の種類の子犬や子猫が愛らしい姿を見せてくれている。

当然、購買意欲を掻き立てられ、ふと家に連れて帰りたくなってしまう。

店員さんに声をかけられ、ペットを実際に抱っこさせてもらい、その日には連れて帰らなくとも、そんなことがきっかけでペットを買うことになるのは、自然な流れかもしれない。

ペットショップでは、買い手の家族構成や年齢、飼育環境を確認することはなく、つまり迎えられる先がペットにとって安心して一生を過ごせる場所であるかを確かめることなく、売買が成立してしまう。

その結果、「転居するから」「高齢で面倒がみられなくなったから」「子供がアレルギーを発症したから」「吠えて近所迷惑だから」「病気になったから」と、事情が変わった途端にいとも簡単にペットを捨てるという選択をする人が出てきてしまう。

2.ペットショップの闇

ペットショップでペットを買ったとしても、最後まで責任をもって大切に飼えば問題ないと思いがちだが、残念ながらそうとは言えない。

ペットショップでは安定的に在庫を確保するために、次々と新しく動物を仕入れる必要があり、仕入れ元であるブリーダーは大量に繁殖し販売する。

どんどん繁殖させて生まれた子犬や子猫は次々とペットショップに並べられるが、ペットの売れ時は生後2~3カ月と言われ、それより大きくなってしまうと売れ残ってしまう。

売れ残った動物を保健所に持ち込むことは法律で禁止されているものの、仕入れた動物と売れた動物の数を考えた時に、売れ残った動物の行く末がどうなっているかについては不明な部分があるという。

また、ペットの大量生産を可能にしているブリーダーのもとには当然、多くの繁殖犬、繁殖猫等がいるわけだが、たびたびの繁殖で役目を終える頃にはボロボロになっている。

引退した動物はそのままブリーダーのもとで余生を過ごしたり、里親を見つけてもらえるケースがある一方で、心ないブリーダーは金銭的、物理的余裕がないからと平気で飼育放棄をするという。

ペットを繁殖し、ペットショップで販売するというビジネスは、動物を大量生産、大量消費し、結果的にこの仕組みが動物の殺処分を生み出す根本原因となっている。

ペットショップでペットを購入することは、このビジネスを促すことに直結し、ペットショップでペットを購入する人がいる限り、この負のサイクルを止めることは出来ない。

残念ながら、ペットショップでペットを購入することは、願わずとも動物の飼育放棄を助長し、知らず知らずに殺処分に手を貸していることになってしまう。

3.遺棄された動物の惨状

飼育放棄される動物たちは野山や団地、公園などに放置されるケースも少なくない。

ひどい時にはゴミ置き場にダンボールに入れて捨てられるという話も聞く。

当然、遺棄された動物たちは食べ物にも寝る場所にも困り、生きていくことが困難になる。

猫を例に挙げてみよう。

もともとアフリカの暑い地域が原産の猫にとって日本の冬は過酷である。

気温の低下により免疫力が落ち、さまざまな感染症にかかってしまう。

猫風邪が治らず、鼻水がひどくて息が出来なくなったり、目ヤニで目が開かなくなり、そのまま悪化して失明するケースもある。

抵抗力の弱い子猫のほとんどはお腹に寄生虫がいて、体中にカビが回っていることもしばしば。

冷え込んだ冬の日に暖を取れないまま、体が凍った状態で亡くなって見つかるケースもあるという。

夏は夏で水を求めてさまよい、熱中症にかかったり、不衛生な水を飲んで感染症にかかり命を落とすこともある。

当然、外にいる以上、交通事故に遭う場合もあれば、異常者の餌食となり虐待の末に亡くなってしまうこともあるという。

野良猫の寿命は長くて5年と言われ、適切な環境で飼育された場合の半分も生きられない。

4.自然繁殖という問題

去勢されないまま野生に放たれると、当然、繁殖が進み新たな問題を生み出す。

たとえば山口県周南市では数年前から野犬が大量に繁殖している。

市民が野犬に追いかけられて囲まれたり、庭を荒らされたりといった被害が数多く報告されている。

また、野犬は狂犬病ワクチンを施されていないので、狂犬病が広まらないかも心配されている。

捕獲数は年数百頭にのぼるというが、有志の住民でパトロールをし、ケージをしかけてはいるものの、犬は賢いので、効率よく捕獲が出来ているわけではないという。

一度、野に出て増えてしまった野犬はコントロールすることが極めて難しい。

5.保健所での動物たち

保健所に持ち込まれた犬や猫は、怯えてじっとしている。

怖くてずっと啼いている子もいるという。

まるで保健所で自身がこの先どうなるのかを察知しているように。

犬や猫の知能は、人の2~3歳と同じくらいで、ある程度は人間の言葉も理解していると言われている。

処分の直前にパニックを起こして暴れる様子が見られることもあると聞くと、あまりに残酷で目を覆いたくなる。

殺処分に際して、環境省はできる限り動物に苦痛を与えない方法で処分するよう求めているが、費用などの理由から麻酔薬の注射による安楽死ではなく、炭酸ガスを使った窒息死を選択する保健所も少なくない。

何をとっても目を背けたくなるような辛い現状がそこにある。

そして、この悲劇を作り出しているのは他ならぬ私達人間である。

6.保護活動で減少する殺処分

1970年代半ば、日本では全国で犬、猫合わせて合計12万頭以上が保健所にもちこまれ、うち98%が殺処分されていた。

その後、徐々に数は減少し、現在では年間の引き取り数が5万頭あまり、うち殺処分は20%強と、格段に少なくなっている。(2023年度の全国犬猫引き取り数52793頭、譲渡31977頭、殺処分11906頭、環境省しらべ)

殺処分が減少した背景には、地域の動物保護団体や個人で保護活動を行っている人たちの多大な尽力がある。

動物は保健所に持ち込まれてから一定の日数が経過すると殺処分されるため、保護活動をしている人達がその前に引き取り、団体の施設や個人宅へ連れ帰っている。

また最近では野良犬、野良猫の生息地域に直接出向き、保健所を介することなく保護するという活動もさかんになっている。

7.地道な保護活動

ここで簡単に保護活動の流れを説明する。

飼い主が不明な犬、猫を引き取り、一時期、動物保護団体の施設または個人宅で世話をし、新たな飼い主を探す。

この世話の間に、健康状態を調べて適切な治療を施したり、去勢避妊手術を行う。

また、猫の場合は手術をした後に新たな里親を探すケースと元いた場所に戻す場ケースとに分かれる。

というのも、団体の施設や個人宅にも限りがあり、すべての猫を収容することは不可能であるため、飼い主が見つかりやすい子猫や、病気で治療が必要な猫、人馴れしている猫でなければ、もともと暮らしていた場所に返しているそうだ。

このような活動は、「捕らえ(Trap) 」、「避妊去勢手術をして(Neuter) 」、「元いた場所へ返す(Return) 」ことから、TNR活動と呼ばれており、昨今、テレビやSNSでも耳にすることが増えたのではないだろうか。

TNRによって元いた場所に返された猫は去勢避妊手術をしたことがわかるように耳に小さな切り目が入れられている。

その形が桜の花びらに似ていることから、さくら猫と呼ばれ、地域猫として近所の餌やりボランティアさんの手で見守られることとなる。

一代限りの命として大切に残りの猫生をまっとうできるよう、地域で面倒を見ていくのである。

実は一口に「捕らえる」といっても、犬や猫の捕獲は簡単な作業ではない。

捕らえるためには、まず捕獲器を置くところから始まるわけだが、住宅地に捕獲器を置く場合も多く、近隣住民に許可を取る必要がある。

近隣住民が皆協力的とは限らず、理解を得るのに説得が必要なケースも多い。

拒否されることもある。

やっと捕獲器を置けたとしても、犬であれ、猫であれ野生で暮らす動物は警戒心が強く、そうやすやすと捕獲器に入ってくれるわけではない。

餌付けをしてある程度慣らす期間を経て、ようやく捕獲器で捕らえるチャンスがやってくる。

この餌付けに1カ月、2か月かかることもしばしばという。

保護活動は、一匹一匹の事情に寄り添いながら進めていく、実に地道な活動である。

8.保護活動における費用の問題

保護活動を行うには当然費用がかかる。

保護した犬・猫の去勢避妊手術費、治療費、ワクチン代、餌代、施設の家賃や光熱費等々、その内容は多岐に渡る。

これらの資金を集めるために、保護猫カフェを経営したり、オリジナルグッズや手作りグッズを企画、販売したり、寄付を集めるためにブログやSNSで情報を発信したり、各地で開かれる保護犬・保護猫イベントに参加したりと様々な活動を行っている。

しかし、なかなか全費用をまかなうには至らず、結局、保護活動をしている人たちが持ち出しで実働しているところも多いと聞く。

9.正式譲渡までの長い道のり

無事に捕獲をし、予防接種や治療、去勢避妊手術を終え、動物保護団体の施設に迎え入れることが出来たとしても、すぐに里親を探せるとは限らない。

なぜなら、野良犬、野良猫の中には人への警戒心が強く、そのままでは一般家庭でペットとして飼うには難しいケースも多いからだ。

その場合、時間をかけて、野良犬、野良猫と少しずつ触れ合い、人間がこわい存在ではないことをわかってもらう必要がある。

一方、ここまで苦労して準備をしても、譲渡する里親が簡単に見つかるとは限らない。

子犬や子猫は人気があり早くに里親が決まるが、成犬、成猫はどうしてもその機会が少ない。

何らかの病気や障害があると、里親が決まる機会はさらに減り、団体の施設で終生を過ごす場合も多い。

縁あって里親候補者が現れても、実は即、譲渡というわけにはいかない。

まずは、保護犬、保護猫がその里親のもとで終生安心して過ごせるかの審査が行われる。

飼い主が年齢的に保護犬、帆保護猫を一生お世話できるか、もし、高齢ならば子供など飼育を引き継げる者がいるか、適切な飼育環境を用意しているか、遠方への転居・結婚等による環境の変化で飼育不可能になることはないかなど、譲渡先の状況が細かく調べられ、適切と判断されなければならない。

また、いきなり譲渡というわけではなく、2週間から3カ月ほどのトライアル期間が設けられ、この間に飼育を続けていくことが出来るか、里親候補者はじっくりと保護犬、保護猫と向き合うことが出来る。

この間に不安に感じたら、動物保護団体に相談し、アドバイスをもらうことも出来る。

以上すべてをクリアしてはじめて正式譲渡が決定する。

最後に「飼育放棄をしない」「他に譲渡をしない」といった内容の誓約書にサインし、無事、譲渡となる。

譲渡後は定期的に飼育状況を動物保護団体に報告することが必要となり、同団体が飼育不適切と判断した場合は譲渡を中止し、保護犬、保護猫を戻すこともできるという。

譲渡までの手順もその後しなければならないことも、ペットショップよりはるかに多く時間もかかるが、そのおかげで「こんなはずじゃなかった」といって安易にペットを手放したり、ペットたちが不適切な環境で飼育されることはなくなる。

10.動物保護団体の施設を通じて救われる命

動物たちはブリーダーの手によってどんどん生産され、余剰となったり、無責任な飼い主に見放されて遺棄される。

さらに戸外では繁殖が進みどんどん数が膨らむ一方で、保護活動で保護できる個体には限りがあるため、保護したい個体数に比べて団体の施設は圧倒的に足りていない。

もし、団体の施設からペットを1匹でも2匹でも迎え入れたならば、迎え入れたペットを救うだけでなく、保護を待つ別のもう1匹、2匹ををも救うことになるのだ。

まとめ

ペットビジネスには私達からは見えにくい裏の顔があること、動物たちがその犠牲となり虐待や殺処分を受け続けて来たこと、そして、そこに救いの手を差し伸べる動物保護団体や個人の存在があることについて紹介して来た。

ペットを迎えようと思ったときに、ペットショップに行くのではなく、動物保護団体の施設や保健所に出向いてみることが私達に出来る第一歩であることがよく分かったと思う。

また、ペットを迎えずとも動物保護活動をしている人たちへ寄付をするのも一つの貢献になるだろう。

最後に、SNSで紹介されていたエピソードを記してしめくくりたい。

とあるペットショップへ就職のために面接を受けに行ったが、こんなことを言われたという。

「ショップの動物が病気になった場合、治療はしませんが、あなたはそれに耐えられますか」と。

一人でも多くの人が、動物愛護やペットビジネスについて正しい知識をもち行動を重ねることで、人間のエゴの犠牲になる動物たちがいなくなっていくことを願ってやまない。

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