法科大学院に入るべき?注意点は?入試対策はどうする?徹底解説

今回は法科大学院に入ろうか悩んでる方、あるいは法科大学院とはなにかと調べている方に向けて、法科大学院の制度や仕組み、入るメリット・デメリットについて解説していきます!
筆者は法科大学院修了生(※大学院の場合は卒業ではなく、修了と言います。)ですので、法科大学院生時代の実体験を基にした解説もふんだんに盛り込んでいきますので、ぜひ読んでみてください!
司法試験制度・法科大学院制度解説
法科大学院とは

そもそも法科大学院とはなんでしょうか。一言で言えば、法科大学院とは、司法試験の受験資格を得るための学校です。
司法試験は、弁護士・検察官・裁判官になるのに必要な試験です。司法試験に合格して司法修習を受けると、弁護士になる資格が得られます。
また、司法修習生は検察官や裁判官に任用される候補者名簿に載ることもできます。数少ない例外を除けば、弁護士・検察官・裁判官になるためには司法試験に合格する必要があります。
司法試験の受験資格

司法試験の受験資格は、以下のどちらかで得ることが出来ます。
・予備試験に合格する。
・法科大学院を修了する。
予備試験と司法試験は毎年1回同じ時期に実施されるので、予備試験に合格すればその1年後に司法試験を受験することができます。また、予備試験には受験資格がなく、誰でも受けることが出来ます。
法科大学院はそれに比べると時間がかかります。「大学院」と名がついている通り、原則として大学を卒業した人でないと入ることが出来ません。
未修と既修
法科大学院には2年コース(既修者コース)と3年コース(未修者コース)があります。
2年コースは、既修者コースといい、法学を勉強した人向けの課程です。入学試験で法律のテストがあります。
3年コースは未修者コースといい、法学を勉強したことがない人向けの課程です。
入学試験では法律のテストではなく、面接や小論文が出題されます。法学を勉強したけど、自信のない人などが受けることもあります。というよりも、そちらの方が多い印象です。
法曹コース
学によっては法曹コースという課程を備えているところもあります。
法曹コースとは、大学の学部と法科大学院をセットにして5年間で法科大学院修了の資格を得られる課程です。大学受験の時にこれを選べば、普通に大学を卒業した場合の4年間に+1年するだけで司法試験受験資格が得られます。
学位

大学院と名のついている通り、法科大学院を修了すると、「法務博士(専門職)」という学位を得ることが出来ます。
「博士」と書かれていますが、博士ではありません。博士の一個下の「修士」と同格の扱いを受けます。
とはいえ、博士の一個下が得られるということで、博士課程入学の受験資格が得られることになります。法科大学院制度の開始時には、このルートで法学部の研究者になる人を増やす意図もあったそうです。
法科大学院に入るメリット
司法試験を受けられる

司法試験を受けるには、先ほど書いたように、法科大学院を修了するか、予備試験に合格するしかありません。予備試験は狭き門です。確かに予備試験ルートの方が、時間もお金もかかりません。
しかし、予備試験の最終合格率は例年4%ほどであり、毎年の合格者数は400人程度です。毎年の司法試験合格者数は1500人前後ですので、合格者の2/3は予備試験ではなく法科大学院修了者です。
そのため、法科大学院ルートを通るのが、司法試験のメジャーなルートといえます。
同級生との緊密な関係
こう書くと、法科大学院ルートは予備試験ルートの妥協と思われるかもしれませんが、法科大学院には法科大学院のメリットがあります。
特に人間関係で言えば、法科大学院生の同級生同士のつながりがかなり強くなります。大学の学部に比べて、法科大学院の定員は少なく、また、司法試験合格という共通の目標を有しているので、互いに緊密になることが多いです。
そのよく知る同級生が周りで勉強をしているので、自分もつられて勉強をするモチベーションにもなりますし、互いに教え合うこともよくあります。
特に、司法試験は論述が多くの点を占めますので、その答案を他人に見せてブラッシュアップするのが重要となっていきます。
また、将来的に弁護士仲間になる同級生とのつながりは必ず役に立ってくるでしょう。
教員との距離も近い
大学からすると自分のところの法科大学院の司法試験合格率には関心があります。
対応は教員にもよりますが、課題や試験の答案についてのコメントが詳細だったり、司法試験の過去問の答案の添削を見てくれたりします。授業後や授業外での質問もかなり親身になって付き合ってくれます。
実務家教員
法科大学院では、現役の弁護士や裁判官・検察官の教員が教える授業もあります。法科大学院制度を始める時に、それまで司法修習で教えていた実務科目の一部を法科大学院で教えることになったからです。
この実務家教員の方々も、かなり親身になって質問に付き合ってくれます。法曹の仕事の実情について、授業内や授業後に話してくれるので、勉強のモチベーションになったりします。
また、司法試験のことについても、質問すれば快く答えてくれます。実務家教員は司法試験合格者でもあるので、勉強法や勉強そのものについて、実際の合格者の知見を得る貴重な機会の一つとなります。
実務科目

法科大学院では、実務科目があります。民事では、実際に訴状を書いたり訴訟で戦ったりするときに必要な、要件事実論を勉強します。また、実際に架空の事例についての訴状を書く課題もあります。
刑事では、実際の事例を基に作成された書類や証拠などを基に、起訴状を書いたり、あるいは弁護士目線で弁論を用意したりします。
これに加えて、模擬裁判も行います。模擬裁判では、架空の事例についての書類や証拠を基に、自分で主張を組み立て、弁論を作成します。
そして、なにも知らされていない裁判官役の学生の前で、本物の裁判の通りの進行をしていきます。証拠を裁判官に見せ、自分側の主張を言い、証人役の学生に質問をしていきます。異議ありもいいます。
上記は司法修習でも行いますが、司法修習が短縮された都合上、法科大学院で先んじてやっておくことにはメリットがあります。
デメリット
お金がかかる

法科大学院にも、当然学費がかかります。むしろ、法科大学院は高額な学費がかかることが多いです。
国公立でも学費は年84万円です。この額は、ほかの課程に比べても高額なものとなります。大学学部や修士課程では年53万円です。なお、後で話す通り、留年もありえます。これ以外にも、入学金や共済費もかかってきます。
そして、教科書代も決してバカになりません。法科大学院の授業で使う教科書は、分厚い法学専門書が中心となるため、1年間に数万円ほどは覚悟しなければなりません。
そして、司法試験合格のためには、授業外で買う参考書も惜しみたくありません。司法試験予備校が発売している、いわゆる予備校本は、特に苦手科目を効率的に理解するために有効です。
司法試験の過去問の答案集や、論証集といった本は買っておきたいところです。法科大学院がない都道府県もあり、一人暮らしをするなら生活費も当然かかってきます。これらのお金を、奨学金やアルバイトで賄う必要があります。
なお、アルバイトをしていては司法試験には受からないという意見も耳にしますが、私の周りではアルバイトをしながら一発合格している人も結構いました。
更に言えば、国公立の場合は、大学院の授業料免除が結構認められる印象があります。JASSOの第一種貸与型奨学金も大学院生向けに月額5万円・8万8千円の選択肢を選べます。
家庭環境や場合にもよりますが、どうしても金銭面で進学できない、ということはないでしょう。
人間関係がしんどくなる場合もある
同級生との距離が近いので、場合によってはしんどくなります。
性格に問題がある同級生がいた場合、この距離の近さが重傷となることがあるのです。私の同級生は全員いい人だったのですが、これはほとんど運の問題なので、どうしようもありません。
法律家になろうとする人なので、大体は正義感があったり、真面目な人です。しかし同時に、『組織に属したくない』という理由で弁護士を目指す人も多いです。
そういう人であっても、大抵はいい人ですし、社会性にも問題ないことが多いです。ただ、『組織に属したくない』理由が社会性に問題があることもあります。
とはいえ、距離が近くとも同級生は仕事の同僚と異なり、関わらなくても問題が生じません。関わらないという選択で、ある程度は緩和できます。
精神がしんどい

法科大学院では、1日何時間も勉強をします。法律科目の授業はソクラテス式と言って、先生の質問に学生が答えていくという方式です。
間違ったことを言えば、容赦なく指摘が飛んでくるので、予習は欠かせません。難しい応用的なことをするので、復習も欠かせません。その上、司法試験の勉強は別でやる必要があります。
更に言えば、司法試験に合格できなかったらどうしようというプレッシャーにも追い詰められます。司法試験に合格しないまま法科大学院を修了した場合、ほとんどの場合は無職の状態になります。
それからまた受験勉強の日々に戻るか、就職をするか、苦しい状況になるという圧力に苛まれます。このような状況が、心に来ます。繊細だったり、思いつめてしまう人は、意識的にリフレッシュする必要があります。
ただ、同世代の仕事をしている人も、しんどい思いをしていることでしょう。どちらがしんどいかを比較することはできません。
しかし、仕事では人間関係での苦しみを抱えることもあると考えると、司法試験の勉強にだけ向き合えばいい法科大学院の方が楽という側面もあります。結局は心持ち次第ということになります。あと実家の太さとか。
注意点
落とし穴

デメリットと若干被りますが、入るまであまり意識しない落とし穴についても解説します。
留年
留年しなかった場合、既修コースでは2年、未修コースでは3年が標準です。
しかしながら、留年は結構起こりえます。特に未修者コースでは顕著に多く、30~40%の留年率も珍しくありません。年度と大学によっては60%が留年するのも見たことがあります。
未修者コース1年では、本来法学部で4年間かける法律の基礎を1年で学ぶことになります。未修者コースの1年目はほとんどが必修科目で、多くの場合1つも落とせないため、留年率が非常に高くなっています。
法科大学院の期末試験は論述式なので、未修者で論述の訓練が十分に行えないというのも見逃せない点です。
既修者コースはこれほど留年率が高くはありません。しかし、授業の勉強に加えて司法試験の勉強もする必要があるため、単位を取り切れないということも少なくありません。
留年したら、学費の負担が1年分増えるなど、かなりのダメージとなります。そのため、留年に陥る可能性を考えておく必要があります。
司法試験に落ちた場合の就職

2023年度司法試験までは、法科大学院を修了してようやく司法試験の受験が認められていました。
つまり、新卒の2~4か月に試験を受ける必要があったのです。これでは新卒で就職などできません。結果として、新卒切符を棒に振らざるを得ません。
今は在学中受験ができるため、最終学年で司法試験に不合格になったら、そのまま就職活動をするという手があるにはあります。
しかし、司法試験は7月、合格発表は11月とかなり遅いため、そこから就職活動は間に合わないケースも多いです。
法科大学院の選び方
知名度

法科大学院の中でも、東大や京大といった有名大学の法科大学院は、名門とされることが多いです。いわゆる4大法律事務所に入所する弁護士のほとんどが、東大・京大・慶応大・一橋大の法科大学院出身者です。
4大事務所は西村あさひ法律事務所、アンダーソン・毛利・友常法律事務所、森・濱田松本法律事務所、長島・大野・常松法律事務所の4つの法律事務所のことを指します。
これら4つの事務所に入った弁護士は弁護士の中でも特に高収入なため、人気です。そのため、このような4大事務所などに就職したいと考えるのであれば、勉強して名門法科大学院に行くべきかもしれません。
なお、4大事務所にしろ、ほかの就職先にしろ、「大学名で選んでいない」とは言っています。付け加えて言えば、4大事務所に入れるのは、名門法科大学院の中でも上位の成績を有する人だけとも言われています。
したがって、ただ名門法科大学院に入ればいいというわけでもなさそうです。このような例外を除けば、法科大学院の知名度はあまり関係ありません。司法試験に合格したというだけで、実力の証明には十分です。
司法試験合格率
司法試験合格率については、個人的にそんなに気にすることとは思えません。他の要因に優先するほどでもないと思います。たしかに司法試験に受かるかどうかは重要です。
しかし、ほかの同級生が受かっているかどうかと、自分が受かるかどうかはあまり関連がありません。勉強をした人間が受かります。
強いて言えば、優秀な同級生が周りにいた方が、自主ゼミで教わったり、触発されて勉強を頑張ったりするなどのメリットがあります。
未修か既修か
既修コースなら、修了するまでに2年間で済みます。つまり、学費や生活費も2年分で済みます。
また、留年率も低く、合格率も高いです。とはいえ、これは単に既修コースに入学するために法学の記述式テストの訓練をしてきたことが理由です。
未修コースは修了するまでに3年かかります。学費や生活費も3年分かかりますし、授業が増えるため、教科書代もかかってきます。
留年率も高く、司法試験合格率も低い傾向にあります。しかしながら、このような割合はあてになりません。先ほど書いたように、周りがどうかは関係なく、勉強する人が司法試験に合格するからです。進級についても同様です。
むしろ未修者コースでは、法律の基礎的な科目の授業を受けられるという魅力があります。実は、司法試験ではマイナーな判例や学説の知識が要求されることはありません。
むしろ基本的な条文や判例についての知識を応用させる力が問われるものです。ですので、未修者コースで受講するような基礎堅めはむしろ非常に役に立つと言えます。
法学部出身者であっても、その法学の基礎に自信がない場合には、未修者コースは悪い選択ではないといえます。逆に非法学部出身者であっても、既修者コースに入れないことはありません。
入試科目は大学によって異なりますが、最大で7科目、最小で憲法・民法・刑法の3科目です。試験にさえ合格すれば入学できるので、自身の状況に応じて選択しましょう。
立地

法科大学院に毎日通うとなると、重要な要素となってきます。
毎日パソコンや教材を持ち運んで通学することになるので、出来る限り通学時間を短くするのが重要です。駅から近いこと、あるいは下宿から近いことが重要です。
また、法科大学院生では自習室が与えられることが多いので、毎日遅くまで勉強します。付近に夜遅くまで営業しているコンビニやスーパーがないと、不便に感じることが多いです。
一人暮らしでは自分で食事を用意しなければなりませんので、その際の便利さを考える必要があります。また、実家から通えるのであれば、そちらの方が好ましいかもしれません。
施設の充実具合

法科大学院ごとにあまり違いはない印象ですが、施設が充実しているかどうかは確認しておいた方がいいです。
法科大学院生には大抵自習室が与えられますが、少人数部屋の場合と、大部屋の場合があります。大部屋は不在者が多くいて、自由にスペースを使えることがあります。
逆に少人数部屋では、大掃除などを行いやすく、清潔を保ちやすいです。自習室にはロッカーなどがあり、教科書類を置くこともできる場合もあります。教科書は非常に重いので、置いておけるのならかなり便利です。
図書館資料の充実具合が確認できれば、それも確認しておきたいところです。法科大学院生専用の図書館や資料室がある場合もあります。
授業ではレポートの提出を求められることもあります。大学院生にふさわしいレポートを求められるので、調べもののための資料は必要不可欠です。
法科大学院によっては、TKCローライブリーや判例秘書といった、オンラインデータベースへのアクセスIDが付与されることがあります。
これらは、判例やその解説・重要論点についての学説など様々な調べものに必須と言っていいので、それがどれだけ充実しているかも確認しておきたいです。
法科大学院の選び方-まとめ-
長くなったため整理します。知名度や司法試験合格率は気にせずとも構いません。他の人がどうであれ、勉強した人が合格します。
勉強した人が合格する以上、未修コースがものすごく悪いわけではありません。基礎的な授業を受けるのはかなり有用です。とはいえ、既修者コースの方が費用が掛からないという現実的なメリットがあります。
むしろ重要なのは立地と設備です。毎日のように重いものを持ち運んで長時間移動するのは負担が大きいです。近い方がいいですし、ロッカーが便利だといいです。
自習室の広さなども重要です。大学に資料が充実しているかも、見ておいて損はありません。
入試対策
既修か未修か

法科大学院の入学試験は、既修者コースでは法学の論述テスト、未修者コースでは小論文や面接と、全く異なります。
未修者コースの場合
主に小論文を出題する大学が多いです。小論文を出題する意図は、法科大学院の授業や司法試験の答案で論理的な文章を書く能力があるかを測っていると思われます。
論理的な文章を書く訓練という意味では、大学受験や公務員試験の小論文と共通していると思われます。
法科大学院入試の小論文について専用の対策を立てるのは難しいですが、ほかの試験の小論文の参考書を基に、訓練するのがいいと思います。
文章の形式を、法学の試験で用いる法的三段論法にするのがいいという説もあります。
法的三段論法とは、①どういう規則があるか、②それを当てはめるとどうなるか、③結論という順番で回答する形式です。
たしかに司法試験のための能力で選抜する以上、法的三段論法を使う人を評価するというのは説得力があります。
しかし、法学を学んでいない人を対象にするという建前があるので、あくまで文章が論理的であれば評価されると考えるべきかもしれません。
既修者コースの場合
既修者コースの合格に必要な要素は、①基本的な条文や判例の知識、②答案の書き方、③頻出論点への対応、④それぞれの大学の出題のクセへの対応に分けられます。
まず、基本的な条文や判例は、教科書や判例集を読んで習得します。頻出論点は、司法試験で頻出する重要論点です。
司法試験でよく見るため、ほかの受験生もこれを抑えています。なので、合格するためにはそのような頻出論点には答えられるようにしておく必要があります。
予備校本や論証集では、頻出論点のランク付けが行われているので、それを参考にします。答案の書き方を訓練して習得する必要もあります。法的三段論法を意識しながら、回答付き問題集を使って問題を解きましょう。
大学によっては、あまり出ないような論点を出題したり、司法試験で問われないような形式で出題したりします。あらかじめ受験する大学の過去問を一通り確認し、実際に解いておきましょう。
予備校
伊藤塾やLECといった司法試験予備校は、法科大学院入試対策講座もやっています。経済的に余裕があれば、そちらの講座を受けるのがいいです。
まとめ

いかがでしたでしょうか?
法曹になるには、法科大学院はおおよそ避けて通れない場所です。予備試験ルートはかなり険しい道なので、法科大学院に入るかどうかの決断は、法曹を諦めるかどうかの決断でもあります。
予備試験に落ちたら法曹は諦める、法科大学院には入らない、という選択も当然いいです。法科大学院入学にはリスクもデメリットもあります。
しかし、入れば結構いいことがあります。入って頑張れば報われることは多いです。司法試験一発目の合格率は40%ほどもありますし、累積合格率も60%程度あります。
司法試験は決して届かない星というわけではありません。それでは、本文が皆さんの決断の助けになれば幸いです。


