【知っていますか?】従業員と一人親方のための建設業退職金共済制度(建退共)とは?

「建設業退職金共済」という制度をご存じでしょうか?

「建退共(けんたいきょう)」とも呼ばれるこの制度は、建設業で働く人のために国が作った退職金共済。

電気工事士はもちろん、大工・鳶・配管工など建設業界で働く方なら、元請け・下請け・会社規模などを問わず加入することができます。

また、建退共に加入する場合、会社が運営団体と契約を結び、運営団体に掛け金を払います。建退共加入の会社で働く労働者たちは、建設業界で働くのを辞めた時に退職金を受け取ることができます。

退職後のお金の受け取りは、運営団体→元労働者となるので、会社は退職金の支給に関して関わることはありません。

この記事では、「建退共に加入しているとどんなメリットがあるの?」「お金はいくらかかるの?」などなど、建退共に関することをわかりやすく解説していきます。

1.建退共とは何かについて

1.建退共とは何かについて

国が創設した建設現場で働く皆様のための退職金制度です。退職金は、国が定めた基準により計算され、確実に支払われますので、民間の退職金共済より安全かつ確実な制度です。

建退共は、「労働者がいつ、また、どこの現場で働いても、働いた日数分の掛金が全て通算されて退職金が支払われる」という仕組みです。勤務している会社を加入中に退職しても、引き続き建設業界で働いている限り加入し続けられます。

そして、建設業界で働くことをやめた時に、労働者本人に退職金が支払われます。退職金は、長く掛けるほど有利な制度になっていますので、早めの加入をご検討ください。

2. 建設業で働く限り安心!労働者のメリットについて

2. 建設業で働く限り安心!労働者のメリットについて

建退共に加入する会社で働くことで、労働者は建設業をやめた時にお金がもらえます。

これは、労働者にとって大きなメリットです。

24カ月以上(死亡の場合12か月以上)、建退共加入の会社で働いていれば退職金がもらえる対象となり、働いた年数が長くなるほど受け取る退職金の額も大きくなります。

また労働者の働いた年数は、建退共に加入している会社間であれば転職したとしても通算でカウントされます。

つまり、建設業で働き続けるなら建退共に加入している会社を選んだほうがメリットがあるということです。

詳しいメリットを5つに分け解説していきます。

①高い運用利回り

運用の利回り早見表 

※加入地域によって変動があります。

年数日数掛金額退職金額
2年600日192,000円194,880円
5年1,500日480,000円495,399円
10年3,000日960,000円1,089,447円
15年4,500日1,440,000円1,706,343円
20年6,000日1,920,000円2,342,727円
25年7,500日2,400,000円3,010,695円
30年9,000日2,880,000円3,731,751円
35年10,500日3,360,000円4,483,047円
40年12,000日3,840,000円5,267,271円

②国からの補助あり

総額16,000円(証紙50日分)の補助があります。(2021年10月~)

③事業所の掛金は非課税

個人事業所は必要経費、法人は損金として全額計上できますので、大きな負担にはなりません。

④従業員の退職金や福利厚生に最適

⑤経営事項審査で加点あり

3.建退共加入する法人のメリットについて

3.建退共加入する法人のメリットについて

「労働者にメリットがあることはわかった。でも、会社としてはお金を払うだけ損では…?」

法人の立場からこの記事を見ている人は、このように思うかもしれません。

しかし、建退共に加入することは会社としても大きなメリットがあります。

①建退共に入ると転職者に選ばれる

労働者にとって、退職金を受け取れる会社とそうでない会社を比べれば、転職したいのは当然退職金を受け取れる会社ですよね。つまり、建退共に加入することで転職者に選ばれやすい会社になります。

特に、もともと建退共に加入していた方の場合、継続して建退共に加入した方が将来もらえる退職金が大きくなるため、次の転職でも建退共加入の会社を選んだほうがメリットがあります。

建設業で長く働いた方であればあるほど、建退共に加入している会社を選びたいと考えるでしょう。

②建退共に入ると労働者が定着する

労働者が建退共からもらえる退職金の額は、長く働くほど大きくなります。

建退共に加入している会社で長く働くことが労働者のメリットになるので、会社側からすると社員の定着率の向上が見込めます。

つまり、建退共に加入することは良い人材を定着させるために有効な手段と言えます。

③建退共に入ると公共工事を受注しやすい

注目なのは、建退共に入っていると公共工事の受注がしやすくなることです。これはどういうことかというと、公共工事の入札時に行われる経営事項審査の加点要素として「建退共に加入しているかどうか」が問われるのです。

将来的に公共工事にも携わりたいとお考えの事業主の方にとっては、建退共への加入は大きなメリットとなります。

④掛金について

掛け金は、加入者一人あたり1日320円です。(手数料税込110円)

この掛け金は労働者が支払うのではなく、加入している法人(会社)がまとめて支払いますので、加入する社員が10人いれば、かかる金額は1日あたり3,200円になります。

建退共に加入すると加入者分、共済手帳という手帳が発行されます。共済手帳に掛け金分の共済証紙を購入して張り付けることで、掛け金を払ったことを証明します。

補足:かかる費用は損金扱いにできる

掛け金分の共済証紙の購入にかかった費用は会社が支払うことになりますが、その掛け金は損金処理を行うことができますので、全額免税となります。 ※ 個人企業の場合は必要経費扱い

また、加入後は、手帳に証紙を貼り管理するなどの事務作業がありますが、組合で手続きをして頂ければ、組合が全て引き受けます。加入後の面倒な作業は一切ありません。

5.掛金を納める手段について

.掛金を納める手段について

①共済証紙を購入

最寄りの金融機関(※)で「建設業退職金共済契約者証」を提示し、共済証紙を購入します。

※都市銀行・地方銀行・第二地方銀行・一部の信用金庫や信用組合などで購入できます。

②共済契約者

  • 共済証紙は、必ず所定の金融機関で購入してください。
  • 元請業者は、共済証紙をまとめて購入し、下請業者に対しそれぞれの労働者の延べ作業日数に応じて、共済証紙を交付してください。

③共済証紙を建設業退職金共済手帳に貼付

従業員に賃金を支払う際(少なくとも月に1回)、働いた日数分の共済証紙を従業員それぞれの「建設業退職金共済手帳」に貼付し、消印を押してください。

6.加入について

6.加入について

加入のご相談は、お近くの地区本部までお問い合わせください。建退共は、建設業で働く皆様にとって大変有利な制度になっております。ぜひ加入をご検討ください。なお、一人親方も加入できます。

※小規模企業共済や中小企業退職金共済(中退共)と重複して加入することはできません。ご注意ください。

※退職金の申請には10ヶ月以上の加入期間が必要です

7.建退共に加入出来ない人がいるのかについて?

7.建退共に加入出来ない人がいるのかについて?

建設業で働く人であればほとんどの人が建退共に加入できます。しかし、中には例外もあるので注意しておきましょう。

建退共に入れない人

  • 役員報酬を受けている方
  • 現場から離れた本社などに勤務する、事務を専門に行う社員の方
  • 中小企業退職金共済、清酒製造業退職金共済、林業退職金共済制度に加入している方

こんな方も加入できます

  • 外国人の方
  • 1人親方の方 ※ 任意組合への加入が必要
  • 現場で働く事務員の方

建退共への加入や相談を行いたい方向けの、問い合わせ専用窓口が設けられています。

また、建退共の新規加入事業者には、助成制度があります。これは、加入者の50日分の掛け金が免除されるという制度です。積み重なると大きな額なので、加入の際はぜひ利用しましょう。

8.退職金をどんなときに、どうやったらもらえるかについて

.退職金をどんなときに、どうやったらもらえるかについて

建退共に加入し、建設業で働いていた人が退職金を請求する際は、労働者本人が建退共に対して直接申請手続きを行います。

つまり、退職した会社から労働者にお金が振り込まれるわけではないので、そのことをきちんと頭に入れておきましょう。

申請手続きの具体的な内容としては、「退職金請求書」という書類に必要事項を記入し、証明欄に請求事由に該当する必要な証明(下図参照)を受け、そのときに持っている共済手帳と住民票を添えて、都道府県ごとにある建設業退職共済事業支部*に提出します。

退職前に働いている法人の証明が必要になる場合もあるので、退職して会社に行かなくなる前に相談をしておきたいところです。

①退職金をもらえる理由と必要な証明

退職金を請求する理由申請手続きに必要となる証明
独立して仕事をはじめた最後の事業主又は事業主団体の証明
無職になって今後どこにも就職しなくなった最後の事業主又は事業主団体の証明
建設関係以外の事業主に雇われた新しい事業主の証明
建設関係の事業所の社員や職員になった現在の事業主の証明
けが又は病気のため仕事ができなくなった最後の事業主の証明又は医師の診断書
満歳以上になった請求するときの事業主の証明又は住民票
本人が死亡した戸籍謄(抄)本及び被共済者と請求人の順位等を証明するもの

②退職金の受け取り方について

退職金は、「口座振込み」または「支払通知書」で受けとることが可能です。

口座振込みで受け取りたい場合は金融機関の預金口座を指定すれば振り込んでもらうことができ、支払通知書で受け取るときは、機構から支払通知書が送られますので、指定金融機関に提出して現金で受け取ることができます。

また、建退共に加入していた人が死亡した場合、退職金は本人に代わって遺族が受け取ることができます。

受け取りには、遺族の順位によって異なった書類の提出が必要となりますので、その場合は遺族が 勤労者退職金共済機構または建設業退職金共済事業本部に問い合わせを行うことになります。

家族のいる方は、もしもの時のために建退共に加入していることと、自分が死亡した場合の申請手続きの方法や問い合わせ先を家族に伝えておくと安心です。

まとめ

今回は、建退共とはどんな制度なのかを解説しました。

社員の確保・定着のために重要な福利厚生。建退共にまだ加入していない事業主の方は、加入をご検討してみてはいかがでしょうか?

この記事が、建退共について知りたい方に少しでもお役にたてば幸いです!


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