【危険】何故日本人は金融リテラシーが低いと言われているのか

私たちは、毎日の生活の中で、「モノやサービスを買う」「給料や代金を受け取る」「目的をもってお金を貯める」または「お金を借りる」など、様々な形でお金にかかわって暮らしています。

お金やお金の流れに関する知識や判断力=「金融リテラシー」は、私たちが社会の中で経済的に自立し、しっかりと生きていくために欠かすことのできないものです。ここでは最低限身に付けておきたい金融リテラシーについて解説します。

1.金融リテラシーとは何かについて

1.金融リテラシーとは何かについて

「無駄づかいはいけないよ」「お金はよく考えて使いなさい」「おこづかい帳をつけるといいね」などなど――子どもの頃、おこづかいやお年玉と一緒に、こうした言葉をもらった人は多いのではないでしょうか。

あるいは今、おこづかいをあげる立場になって、子どもたちに同じような注意をしている方も少なくないでしょう。

私たちの親も、私たち自身も、お金との適切な付き合い方を知ることは、子どもにとって重要な“基礎科目”だと考えているのです。

私たちがしっかりとした生活基盤をもって生活していくためには、お金を上手に管理したり、注意深く使ったりすることが重要です。

そのためには、お金について十分な知識をもち、お金との付き合い方について適切に判断する力が必要です。

このようなお金にかかわる、金融や経済に関する知識や判断力のことを「金融リテラシー」と言います。

生命保険や損害保険も金融商品ですし、企業などにお勤めならば、金融商品のひとつである財形貯蓄をされている方も多いでしょう。

加入する保険を選んだり、財形貯蓄を設計する際には、自分の収入やライフスタイル、将来の人生設計などを踏まえて、いつどのような時期にどの程度のお金が必要になるか、そのためのお金をどのように準備すればよいかなどを考えて、保険や資産運用に関する情報を集め、理解し、判断したりすることになります。金融リテラシーが役に立つ場面は、身近なところにあるのです。

また、実態のない投資話を持ち掛ける悪質商法や投資詐欺の被害が後を絶ちませんが、そうしたトラブルを避け、確かな生活を実現できるようにするためにも、金融リテラシーを育む「金融経済教育」が求められています。

2.金融経済教育の必要性について

2.金融経済教育の必要性について

「金融リテラシー」を身に付けるための教育が、金融経済教育です。国民一人一人が、金融やその背景となる経済についての基礎知識を高め、日々の生活の中で、金融や経済に関する基礎知識に基づいて、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力、すなわち「生きる力」としての金融リテラシーを育むためのものです。

金融リテラシーの向上は、一人一人が経済的に自立し、より良い暮らしができるようにするものですが、その意義・目的について、金融経済教育のあり方について検討を行ってきた金融庁の「金融経済教育研究会」が平成25年4月に公表した報告書をもとにすると、金融経済教育の意義・目的を次のように説明することができます。

①金融リテラシーで生活スキルを高めよう

多くの人がライフステージの各場面で、貯蓄・資産運用・住宅ローン・保険加入など、様々な金融商品を利用するなど金融と関わることになります。

社会人として経済的に自立し、確かな暮らしを送っていくためには、計画性のない支出を抑え、収支の改善を目指す家計管理や将来に備えた生活設計を行えるようになるとともに、それぞれの生活設計に合わせて金融商品を適切に利用することが重要になってきます。

そのためには、金融全般の基礎を知るとともに、様々な金融商品や金融サービスの特性を理解し、情報を集めることを習慣化し、それらの知識・情報をもとに適切に判断する力を備えることが必要です。自分自身と自分の家族のために、金融リテラシーは大事な生活スキルなのです。

② 金融リテラシーを向上して、健全で質の高い金融商品を育てよう

近年、金融にかかわる規制緩和を背景に様々な金融商品が登場しています。さらにクレジットカードやキャッシングにかかわる金融サービスなど、多種多様なサービスが提供されるようになっています。

選択の幅が広がる一方で、それぞれの金融商品や金融サービスの仕組みや特徴、リスクなどについて利用者が正確に理解することが難しくなっています。

様々な利用者保護を図る仕組みはありますが、なによりも、利用者一人一人が金融リテラシーをもち、商品を選別する目を養うことが重要です。

金融に限らず多くの商品やサービスでは、消費者が十分な知識や情報を持ち厳しい選択眼を持つことで適切な競争を促し、よりニーズに合った良質な商品やサービスを生む原動力となってきました。

私たち一人一人の金融リテラシーが向上し、質の良い金融商品や金融サービスを選択することで、質の改善が図られ、より良い金融商品や金融サービスが普及していくことが期待されます。

③ 家計の金融資産を有効活用しよう

日本の家計金融資産(現金、預貯金、株式、投資などの資産)の合計は約1,600兆円。その過半数が預貯金で運用されていますが、低金利が続く中、預貯金だけでは将来に向けた十分な資産形成が難しくなっています。

分散投資や長期投資のメリットについて理解が深まることで、分散・長期投資を行い、中長期的により良いリターンを安定的に得ることが可能になります。

また、家計金融資産の分散・長期投資は、成長分野への持続的な資金供給につながるなど、経済全体の成長に貢献することも期待されます。

3.最低限身に付けておきたい金融リテラシーについて

3.最低限身に付けておきたい金融リテラシーについて

金融経済教育については、これまでも、金融庁をはじめとする関係当局や金融広報中央委員会、学校や自治体、業界団体や各金融機関、NPO団体など、多種多様な関係者によって、金融や経済の知識の習得を中心に行われてきました。

しかし、一人の社会人として、経済的に自立し、しっかりと暮らしていくためには、金融や経済の知識だけでなく、家計管理や将来の資金を確保するために長期的な生活設計などを含めた金融リテラシーが必要です。

もちろん、各種の保険やローン、クレジット、資産形成商品などの金融商品を適切に選択するための基本知識を身に付けたり、専門家のアドバイスを活用することの必要性について理解しておくことも重要です。

各分野や項目は下記の通りです!

分野1. 家計管理

(1)適切な収支管理(赤字解消・黒字確保)を習慣にすること

分野2. 生活設計

(2)ライフプランを明確にすること

分野3. 金融と経済の基礎知識と、金融商品を選ぶスキル

【金融取引の基本としての素養】
(3)契約をするとき、契約の基本的な姿勢(契約書をよく読む、相手方や日付・金額・支払い条件などが明記されているか、不明点があれば確認するなど)を習慣にすること
(4)情報の入手先や契約の相手方である業者が信頼できるかどうかを必ず確認すること
(5)インターネット取引の利点と注意点を理解すること

【金融分野共通】
(6)金融と経済の基礎知識(単利・複利などの金利、インフレ、デフレ、為替、リスク・リターンなど)や金融経済情勢に応じた金融商品の選択について理解すること
(7)取引の実質的なコスト(価格、手数料)を必ず確認すること

【保険商品】
(8)自分にとって保険でカバーしたい事態(死亡、病気、火災など)が何かを考えること
(9)カバーすべき事態が起きたとき、必要になる金額を考えること

【ローン・クレジット】
(10)住宅ローンを組む際の留意点を理解すること
ア.無理のない借入限度額の設定、返済計画を立てること

イ.返済を難しくさせる事態に備えること
(11)無計画・無謀なカードローンやクレジットカードなどの利用を行わないことを習慣にすること

【資産形成商品】
(12)高いリターンを得ようとする場合には、より高いリスクを伴うことを理解すること
(13)資産形成における分散(運用資産の分散、投資時期の分散)の効果を理解すること
(14)資産形成における長期運用の効果を理解すること

分野4. 外部の知見の適切な活用

(15)金融商品を利用するにあたり、外部の知見を適切に利用する必要性を理解すること

4.各年代で身に付けたいことについて

4.各年代で身に付けたいことについて

今後は、前述の「最低限身に付けるべき金融リテラシー(4分野・15項目)」を金融経済教育を担う関係者で共有し、金融経済教育の取組を進めていくこととしています。

また、学校段階、社会人・高齢者の各段階で効率的・効果的に金融リテラシーを身に付けていくために、金融経済教育推進会議では、年齢別・分野別の教育内容について体系的にとりまとめた、より詳細なスタンダードマップを示していく予定です。

年齢別・分野別の教育内容

年齢別習得すべき内容
小学生
・買い物やこづかい、お年玉、手伝いなどの体験を通じて、お金に関わる経験・知識・技能を身に付け、社会の中で生きて行く力の素地を身に付ける(例)こづかい帳をつける商品の選び方を知り、工夫して買い物ができるようにする貯蓄の意義を理解し、計画的に貯蓄する習慣を身に付ける
中学生
・こづかい管理や買い物の経験も増え、家計や生活設計について理解し、将来の自立に向けた基本的な力を養う(例)家計の収入・支出について理解を深める職業体験などを通じて、勤労を実感し、つきたい職業について考え、情報を収集する
高校生
・生活設計の重要性や社会的責任について理解し、社会人として自立するための基礎的な能力を養う(例)長期的な資金管理の大切さを理解する進路選択などを通じて、意思決定の重要性を理解する
大学生
・社会人として自立するための能力を確立(例)仕送りなどの収入と学費、生活費などの支出を把握するクレジットカードを利用する場合、借金であることを理解し、支払い可能な範囲で利用する金融商品のリスクとリターンについて理解する卒業後のライフプランを具体的に描く職業選択に必要な能力開発・資格取得基本的な金融商品の仕組みや特性を理解する
若年社会人
・生活面・経済面で自立(例)給与天引き預金を行うなどの工夫も行い、貯蓄行動を定着させる収入のうちの手取り額、生活費などの支出を把握する公的年金・保険の内容を把握し、必要に応じて貯蓄や民間の保険・年金への加入などを考えるキャリア計画を立て、必要な自己啓発を行う様々な金融商品の性質を理解し運用する金融商品の利用には、外部の知見を適切に活用する必要があることを理解する
一般社会人
・社会人として自立し、本格的な責任を担う(例)住宅購入や子どもの進学などのライフイベントについて必要な知識やノウハウを習得し、資金管理を行う死亡や疾病、火災など不測・緊急の事態を想定し、貯蓄、保険加入などを適切に行う収支の改善に努め、黒字を確保し、貯蓄や投資を通じて将来に向けた資産形成を行う必要に応じ、住宅ローンなどの負債も計画的・有効に利用できる
高齢者
・定年退職、年金生活(例)年金受給額などの範囲内で支出を行えるライフスタイルに切り替える判断力や理解力が衰えた場合の資産の管理・運用の準備を行う

5.お金や金融について学びたい時について

5.お金や金融について学びたい時について

金融・経済をめぐる環境は時代によって大きく変化していますし、様々な金融商品や金融サービスが続々と生まれています。

そうした進化に取り残されないよう、社会人になってからも適宜新しい情報を得て、金融リテラシーを高めることが重要です。そのためには、金融機関や業界団体、自治体などが行っている金融セミナーや公開講座などが利用できます。

また、金融に関する相談窓口や、各地で開催される金融セミナーなどのイベントなどの情報も調べることができます。ぜひ、活用してみてください。

まとめ

金融リテラシーが低い原因として示唆されているのは、金融教育の不足です。日本人の75%が学校や勤務先で金融教育を受けたことが無く、62%の方が家庭でもお金の管理を教わっていないという結果になっています。

昔と比べて金融商品が多様化、複雑化し、投資詐欺商法なども多発する中、金融リテラシーの重要性はますます高まっています。

その向上のため、常に新しい情報を収集することを心がけましょう。正しい金融行動や考え方を踏まえてグローバル社会で生きていく為の金融リテラシーを高めていくことが最重要です。


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