2023年年末年始にオススメ映画ランキング

第1位 『ノマドランド』(2021年アメリカ) 

amazonプライムビデオにて鑑賞

監督:クロエ・ジャオ 主演:フランシス・マクドーマンド

内容】2020年第77回ヴェネツィア国際映画祭にて最高賞である金獅子賞を受賞。2008年に起きたアメリカの経済破綻の影響を受け、家を失った高齢女性が、亡き夫への思いと離れた愛着のある街に思いを馳せながら、車上生活で日雇いの職を求めて全米各地を旅する「ノマド」の日常を描いた映画。

感想】山の稜線。マジックアワーの広い空。荒野が広がり、道は長く続く。荒れ狂う海も吹き付ける強風でさえも、その中心にはぽっかりと丸い小さな静寂がある。その静寂こそが彼女の居場所なのだ。しかしその場所は、安らぎと底なしの哀しみの谷が共存する静寂な居場所。素晴らしい映画だった。

第2位 『オットーという男』(2022年アメリカ)

mazonプライムビデオにて鑑賞

監督:マーク・フォスター  主演:トム・ハンクス

内容】オットー・ヘンダーソン(63)はピッツバーグ郊外に一人で住む寡夫。半年前に最愛の妻ソーニャを亡くし、失意の中で日々自殺を計画していた。ソーニャの死後、隣人たちにも心を閉ざし孤独の中で暮らすオットーの前に現れたメキシコ人の家族。この家族との出会いが閉ざされたオットーの心を溶かしていく。

感想】あゝびっくりした!涙が溢れて止まらなかった。この手の映画に本当に弱い。”取り戻す!再び繋がる!”。それにこの手の映画の中には、哀れな自分、亡くなった家族、亡くなった友人、そんな人々によく似た人々がいる。やれやれトムハンクスには何十年もやられっぱなしだww。ふと思い出したのは、『一度足が停まったら、もうおいらには何ともしてあげられなくなってしまう。あんたの繋がりはもう永遠に何もなくなっちまう。だからきちんとステップを踏んで踊り続けるんだ。それもとびっきり上手く踊るんだ。ベストを尽くすんだ。そうすればおいらもあんたのことを手伝って上げられるかもしれない。だから踊るんだよ。音楽が続く限り』(村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』より)というセリフ。

第3位 『カモン カモン』(2021年アメリカ)

Netflixにて鑑賞

監督:マイク・ミルズ 主演:ホアキン・フェニックス

内容】ジョニーはラジオ局に勤めるジャーナリスト。ジョニーが取材旅行に出ようとした矢先に、妹のヴィヴから甥のジェシーの面倒を見ることを懇願される。やむなくジョニーとジェシーの取材旅行が始まる。その旅で、思いがけず、互いに心に深い傷を持つ二人が絆を深めていく。

感想】静寂の中にある恐怖と愛欲。狂気と正常。宇宙から見た地球に国境がないように、俯瞰で見られたら大人と子供の境界なんてない。この映画に出てくる全ての人が愛おしくて哀しい。ホアンキン・フェニックスやっぱり好きだな。『起きると思うことは、絶対起きない。考えもしないことがいつも起こる。だから先へ進むしかない。どんどん先へ先へ先へ』。そんなこと考えていた幼い日々があったことさえ忘れてしまう未来がジェシーに訪れますように。

第4位 『君たちはどう生きるか』(2023年日本)

ユナイテッド・シネマにて鑑賞

監督:宮崎駿 出演:山時聡真/菅田将暉 /柴咲コウ/あいみょん/木村拓哉 ほか

内容】宮崎駿による10年ぶりの長編映画。吉野源三郎の同名小説『君たちはどう生きるか』に宮崎監督がインスパイアされて書いたオリジナルストーリー。関東大震災で実母を亡くした主人公の眞人。3年後、眞人の父、勝一は亡妻の妹である夏子と再婚する。亡き母への想い、義母への複雑な感情を抱えて新しい暮らしを始めた眞人がパラレルワールドと行き来する冒険活劇ファンタジー。

感想】男は幾つになっても息子であり続けるのかもしれない。主人公の少年が再び亡き母親の産道を通り、少し成長した自分としてもう一度誕生するということか。

第5位 『福田村事件』(2023年日本)

テアトル新宿にて鑑賞

監督:森達也 出演:井浦新/田中麗奈/永山瑛太/東出昌大/豊原功補 ほか

内容】オウム事件後のオウム信者たちを追った『A』、『A2』、佐村河内守を追いかけた『FAKE』などで有名なドキュメンタリー監督森達也の初フィクション作品。実際に1923年9月6日、関東大震災の混乱の中で、流言蜚語による群衆不安心理により千葉県東葛飾郡福田村(現在の野田市)で発生した香川県からやってきた薬の行商団15名のうちの9名が地元の自警団により殺害されるという事件をもとに描かれた映画。

感想】日本人は見るべき映画。向き合うべき映画。自分たちの恥部をしっかりと描く映画を作った森監督に敬意。日本人の集団心理、総括せずに進む国家観。現代の日本の政界、芸能界、メディア、ネット社会そして警察権力内部で行われていること、それらに踊らされている国民といった構図はこの映画に全て詰め込まれている。勿論自分もその一部であることを強く恥じ入る。100年経ち様々なことが驚異的に進歩したようで、変わらぬ人の愚かさ。惜しいところは、説明過多気味のセリフと一部の素晴らしい役者陣を除き、俳優のレベルの低さを感じてしまう。アップが多くワンサイズ狭いワイドショットの数々が窮屈で観ていられない部分も。そこらがもう少し映画的にクオリティが高かったら、滅多にお目にかかれない大大傑作映画だった。素晴らしい映画でした。

第6位 Coda あいのうた(2021年アメリカ/カナダ/ フランス)

Netflixにて鑑賞

監督:シアン・ヘダー 主演:エミリア・ジョーンズ

内容】聴覚障害者を両親に持つ子供である”コーダ”と呼ばれる10代の少女の葛藤と成長を描いた青春映画。2014年のフランス映画『エール!』のリメイク映画。マサチューセッツ州のグロスターに住む主人公の女子高生ルビー・ロッシは、聴覚障害者の両親と兄と四人家族。家族で唯一耳が聞こえるルビーは早朝から父親と兄とともに海に出て漁の手伝いに追われながら、高校に通っている。歌うことの大好きなルビーは、高校の合唱サークルに入る。彼女の才能に気づいた音楽教師のヴィラロボスは、奨学金を得てバークリー音楽大学への進学を勧める。家族にとっては通訳であったり、社会との橋渡しをしてきたルビーは家族を置き去りにすることと夢に突き進みたい気持ちの間に思い悩む。家族もまた仕事や生活のことでルビーなしの生活は難しかった。彼女が、そして家族が出した答えとは。

感想】ギターの奏法にスリーフィンガーというものがある。弦を三本の指でリズミカルに弾いていく。中学でギターを始めた頃、元歌を聞きながら、ギター譜を見て見様見真似で辿々しく爪弾いたスリーフィンガー。それはやがてリズミカルに少しずつ早く弾けるようになっていく。その成長はまるで人生のロングアンドワインディングロードをリズミカルに跳ねたり、駆け抜けてゆく青春のようだ。そんなことを思わせる映画だった。シンプルだけどよく出来ていた。グッときた。

第7位 『少年の君』(2019年中国/香港)

amazonプライムビデオにて鑑賞

監督:デレク・ツァン 主演:チョウ・ドンユイ/イー・ヤンチューシー

内容】現代中国が抱える社会問題であるいじめ、受験戦争とストリートチルドレンを背景に描かれる、孤独な少女と少年の青春ラブストーリー。貧しい母子家庭に暮らすチェン・ニェンは、母を楽させたいという思いを胸にいじめが横行する進学校に通う成績優秀な女子高生だ。一流大学受験を控えて勉強だけに集中していた。ある日学校の帰り道に、街でリンチされているチンピラのシャオペイを庇うチェン・ニェン。学校では、クラスメイトがいじめを苦に自殺するという事件が起こる。誰もいじめの事実に口を閉ざす中、チェン・ニェンはいじめがあった事実を警察に話す。そのことをきっかけに矛先はチェン・ニェンへと向き、残酷極まりないチェン・ニェンへのいじめが始まる。あの日、チェン・ニェンが救ったチンピラシャオペイはチェン・ニェンを守ろうとする。二人は互いの傷を舐め合うように寄り添っていく。

感想】大人よしっかりしてくれ!結局大人は、、、守れない。いや守られてるんだけど。子供達のセリフが胸に突き刺さる。『決まりだ。君は世界を守れ。俺は君を守る』『復讐が当然の世界なら、安心して子供を産める?』。人生は決して平等ではない。大切な人と出会えるかどうか。友だちに、好きな人に、たった一人の君ために僕の全てを送ろう。フレッシュな二人の俳優が傷だらけになりながら寄り添う姿は瑞々しく、そして哀しいほどに美しい。

第8位 『ソウルメイト/七月と安生』(2016年中国/香港)

amazonプライムビデオにて鑑賞

監督:デレク・ツァン 主演:チョウ・ドンユイ/マー・スーチェン

内容】第53回金馬奨にてチョウ・ドンユイとマー・スーチェンの二人が史上初の主演女優賞のW受賞を果たした。十三歳で出会った七月(チーユエ)と安生(アンシェン)。愛が溢れた円満な家庭育ちで優しく面倒見のいい七月と、留守がちな母と二人暮らしで自由奔放でヤンチャな安生という正反対な二人だったが、とても気が合いすぐに親友になった。七月は高校に進学し安生は専門学校にと道は別れても二人はずっと親友であり続けた。大学生になった七月には恋人がいた。しかしその恋人は安生に密かな思いを寄せていた。七月と安生の関係がギクシャクしていく。そして安生が北京へと移ることをきっかけに疎遠になる二人。しかし運命の糸は悲しい形で七月と安生を再び引き寄せる。

感想】亡き大切な人の人生の続きを紡ぐ。それは、とてつもなく苦しいことだが、そこに自らの贖罪があり、同時にその人は心の中に生き続けているのだ。二人の魂は永遠にともに生きる。

第9位 『ほの蒼き瞳』(2022年アメリカ)

Netflixにて鑑賞

監督:スコット・クーパー 主演:クリスチャン・ベール

内容】1830年の寒い冬の早朝。ニューヨーク州ウェストポイントにある士官学校で惨殺事件が起こる。被害者は無惨な姿で発見された士官候補生だった。事件解決のために呼ばれたのはこの街の外れで暮らす元刑事のオーガスタス・ランドーだった。そんなランドーに協力者が現れる。この士官学校の士官学生であり、若き日のエドガー・アラン・ポーであった。二人は共に事件の謎に迫っていく。

感想】映像から足先に感じる寒さや、暗く重くのしかかる心の傷が伝わってくる。クリスチャン・ベールをはじめ俳優陣の巧みな演技に引き込まれる。電気がない時代を忠実に再現したライティングもとても良かった。辛過ぎた。何もかもが。

第10位 エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス (2022年アメリカ)

Netflixにて鑑賞

監督:ダニエル・クワン 主演:ミシェル・ヨー

内容】第95回アカデミー賞にて作品賞、監督賞、主演女優賞など7部門を受賞した。コインランドリーを経営する主婦のエヴリンは納税申告を控えて、介護している父親やコミュニケーションが上手くいっていない娘や夫との関係などいくつものトラブルを抱えて疲弊している。税務署で夫に乗り移った”別の宇宙の夫”に全ての世界線の命運を託されてしまう。突然起こった突飛な出来事にパニック状態のエヴリンだったが、息つく隙もなくマルチバースの世界へと巻き込まれていく。

感想】人間はそれぞれの心の中に、小さく、しかし壮大な世界を持っている。それは人と交わり新しい世界を知り、それを理解していく。縮んだり、膨らんだりしながら。家族というその世界の集合体は、地域に、街に、国にとなり、そして星となる。その中で喜びや悲しみや痛みや優しさや怒りを知る。それはやがて、芸術や命や愛を育む。それがまた壮大な世界なのである。新しい世界を知ることは、時に不協や争いを産み、憎しみや怒りを育ててしまう。それでも許し合い、理解し合い、互いの幸せを祈り合えると信じる。面白おかしいことばかりではなく、どんなに苦しくともリセットボタンを押すことは出来ない。それでも仮想現実なんてクソ喰らえと叫びたい!どうか少しでも世界から悲しみが減りますように。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

どの映画も、年末年始にご鑑賞いただきたいオススメの作品となっております。

是非、気になる作品から見てみてくださいね!


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